「記者の目から」 読売新聞大阪本社編集局運動部 佐藤 毅

 フラッグフットボールは約十年前から大会などを通して取材してきました。当初からアメリカンフットボールの持つ面白さを安全に体験できるだけでなく、運動が苦手な子でも活躍できる。子供たちのコミュニケーション能力が飛躍的に高まる――など、意外な効果があることをお聞きしてきました。「いつか、そんな逸話を紹介したい」。そんな思いが、ようやく叶いました。
 体力低下や運動不足が進む子供たちの現状や、それらの改善への取り組みを紹介するべく、今春から弊紙で始まりました「未来のチカラ第二部~競技現場の今」でフラッグフットボールを取り上げることになりました。実際に採用が決まってから掲載まで、約1か月しかなく、これまでにフラッグフットボールに取り組まれてきた全ての現場を回ることは出来ませんでした。
 また、紙面の都合で、取材させていただいたうちのごく一部しか取り上げられませんでしたが、この度、協会のご厚意で、フラッグティーチャーのホームページにて、それらを紹介できる機会を頂きました。併せて取材する立場からのフラッグフットボールへの思いについて書かせていただきます。「フラッグフットボールを取り入れてみようかな」と考えている教育関係者の方に少しでも参考になれば幸いです。

読売新聞大阪本社編集局運動部記者
佐藤 毅

【“裏方”が一番人気に】
 奈良県生駒市、平群町で計8年間に渡ってフラッグフットボールを指導してきた現奈良県教委の水谷雅美主査は授業の中で驚かされたことについて語ってくれました。チームの中で「リーダー」や「コーチ」「記録係」などの役割を決めさせていたそうですが、意外にも最も人気があったのはボールやフラッグなどの用具を運ぶ「マネジャー(用具係)」だったと言うのです。
 大人から見れば、裏方的な仕事で、当初は「誰もやりたがらないだろうな」と感じていました。それでも人気となったのは、見慣れない楕円球に真新しいおもちゃのような魅力を感じたからかも知れません。「子どもたちが自主的に練習やゲームを行ったり、仲良く話し合いを進めたりするには、自分が『このチームの一員なんだ!このチームのためにがんばろう』と思えるようなチーム作りをすることが大切です。そのため、それぞれチームの中で役割をもつことがチームへの所属意識を高めることにつながります」(水谷教諭)
 スペース(空間)を見つけて動く、身を挺して相手をブロックし、味方が通る道をつくる――。フラッグフットボールを通して集団への所属意識を高め、さらに自己犠牲の精神などを学ぶことで、例えば、皆が敬遠して押しつけ合っていた掃除係などにも積極的に取り組むことにつながるかも知れません。
 【鬼ごっここそ最高のスポーツ】
 来年度から本格実施される学習指導要領への掲載に尽力された日体大の高橋健夫副学長によれば、子供は鬼ごっこをしている時が最も運動に適した姿勢を取ると言います。相手がタッチしに来るのに備え、左右前後どちらにでも動き出せるように構えると、ひざや腰が理想的な角度になるそうです。
 フラッグフットボールでも導入期にボールを使わず、腰からぶら下げたフラッグを取り合う「鬼ごっこ」を行うことを奨励しています。まずは鬼ごっこで体を動かす楽しさを味わってから、ボールを用いて団体球技の面白さへ。子供たちの発達段階に合わせた様々なルールも用意されています。
 【肯定的なかかわり生むフラッグ】
 今回、取材したフラッグフットボールをやることで教育的な効果を挙げている小中学校では、どの先生もある同じ工夫をされていました。それは教師から子供へだけでなく、子供同士の会話にも肯定的な言葉遣いを徹底させることです。
 「お前のせいで負けたんだ――」。球技には、こんな残酷な面もあるのは事実です。バスケットボールやサッカーなど、プレーが連続する種目では、試合中に問題が起こっても、なかなか修正することが出来ません。それに比べ、フラッグフットボールは1プレーごとにプレーが切れ、ハドル(円陣)で失敗したことの反省をすると同時に、次はうまくやるためにどうすればいいのかを考えます。その際、チームメートのそれぞれの良さを知り、それを最大限に生かそうとすることが、勝利に近づく道だと気付くそうです。
 相手の欠点を言い合うようなチームが、いいプレーが出来るはずもありません。神戸大付属住吉小学校の森一弘副教頭は、ハドルの中で相手を否定するような言葉を聞くと「その言葉は違うね」と優しい言葉で指摘し、改めさせるように導いておられました。
 【他球技をやる前にフラッグを】
 弊紙連載でもフラッグフットボールの効果を多数紹介させていただきましたが、決して他の球技を否定するものではありません。ただ、連載中でも紹介した早大スポーツ科学学術院の吉永武史専任講師の研究によれば、フラッグフットボールでは、あらかじめプレーを図面に記すため、空間を認識しやすくなり、さらに、それが他の球技にも転移することが証明されています。
 他の球技をしている時に、上手な子供だけでパスを回したり、ボールに殺到して団子状態が続いたりする場合は、まず、フラッグフットボールを行ってから他球技に移行するのも1つの手ではないでしょうか。将来、サッカーのワールドカップで、スペースへ抜け出すのが巧い日本代表選手の1人が、「あの動きはフラッグフットボールで学んだものです」なんて言うのを勝手に妄想しています。


コメントのRSSを取得する· トラックバック

» コメントする

フラッグティーチャーコンテンツ

アーカイブ

講師陣紹介

東元春夫
東元 春夫
京都女子大学現代社会学部
森一弘
森 一弘
神戸大学附属住吉小学校 主幹(副教頭)
横町数則
横町 数則
高槻市立第一中学校
南喜普
南 喜普
草津市立山田小学校
鴨谷真
鴨谷 真
日本フラッグフットボール協会 西日本支部(支部長)